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フローズンヨーグルト専門店「パーティーランド」が海外初出店。タイ人を取り込め!東南アジア市場を開拓へ

店舗内装
近隣有数の商業施設に入居する
メニュー写真
石川友夫氏(左)と福木寿紹氏

“シビアな市場”に味とサービスで真っ向勝負

「タイの人々の間に、パーティーランドを根付かせたい」。こう言葉に力をこめるのは、ベイニッチ(東京都渋谷区)代表取締役で「パーティーランド(PARTYLAND)」を運営するイデア(本社・大阪府吹田市)の執行役員広報担当の石川友夫氏と、パーティーランド事業部部長の福木寿紹氏だ。イデアは5月15日、タイの首都バンコクに、「パーティーランド」の海外1号店をオープンした。それ以降、来店客が後を絶たず、順調な滑り出しをみせている。
石川氏によると、好調な理由は、第一にコンテンツの強みだという。「パーティーランド」は、フローズンヨーグルトに、好みのフルーツや菓子を顧客が自分でトッピングできるのが売り。価格はトッピングを載せた分が加算される量り売り形態をとっている。また、フローズンヨーグルトは8~16種類あり、すべて日本の国産100%で、無脂肪・低脂肪だ。タイでも日本産のフローズンヨーグルトを日本から取り寄せるとともに、マンゴーなどのフレッシュフルーツや菓子をトッピングできるスタイルで商品を提供する。価格も量り売り形式をそのまま導入している。
価格は100グラム当たり80バーツで、客単価は200バーツと日本円では600円ほど。この価格は、タイの物価水準からはそう安くはないものの、「パーティーランド」の商品は高校生や大学生など若年層を中心に人気を集めている。タイでは、経済成長に伴い個人所得が伸びている上、米スターバックスが人気を得るなど、一定の金額を飲食に振り向ける層が出てきているのだ。
一方、タイはもともと外資系企業や地場企業の飲食市場での展開が活発で、各種のスイーツが売られているなど、実際には「舌の肥えた消費者がいるシビアな市場」(石川氏)だ。“日本ブランド”を売りにしようとしても、地場市場にはすでに高いレベルの商品があり、日本企業だからといってラクに勝てる市場ではない。
そんな中、「パーティーランド」は原材料の質と商品の味に徹底してこだわるとともに、日本流の質の高い接客サービスを導入することで、成熟したタイのスイーツ市場に挑んだ格好だ。
これまでに、この取り組みは功を奏し、タイ人の心をしっかりとつかんでいるという。タイでの健康志向の高まりもこれを後押ししているようだ。

立地戦略も奏功

さらに、立地戦略も顧客を集めるのに大きく貢献している。「パーティーランド」タイ1号店はバンコクの商業エリアであるサイアム地区の商業施設「サイアム・パラゴン」に入居する。「サイアム・パラゴン」は2005年に設置された6階建ての巨大ショッピングセンターで、敷地内にはレストラン、アパレルショップ、フードコート、映画館、水族館、フィットネスジムなど多彩なテナントが入居している。そのため中間層から富裕層を中心に多数のタイ人が訪れる。
この商業施設のグループ幹部が、日本訪問時に偶然、「パーティーランド」の商品を気に入ったことがきっかけで、タイ進出が決まった経緯がある。このため好立地の店舗を確保できた。高級車やハイブランドのアパレル店舗などが入居する「サイアム・パラゴン」への入居により「パーティーランド」のブランド力を確保することにもつながっている。

SNSと国境を越えたマーケティング戦略

もうひとつ、「パーティーランド」がタイ事業で力を入れるのが、現地消費者を徹底して取り込むためのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を使ったSP(セールスプロモーション)戦略だ。
タイで人気の男優と女優が写真共有アプリ「インスタグラム」に写真やメッセージを投稿し、オンライン上で消費者と直接繋がるバーチャル空間を作っている。
タイでは若年層を中心にSNSやスマートフォン(多機能携帯電話)の普及が進んでいる上、SNSを使った広告戦略に対する若者の反応が非常に良い。また有名人が公の場に現れても、タイの人々は節度を持って接し、有名人の側も一般の人との間に壁をつくらず友好的に接するなど、和やかな関係性が構築されているという。
そのため、SNSを使うことで、消費者と「パーティーランド」との間に“親密圏”とも言えるような親しみのあるネットワークを作り出す戦略だ。
さらに「パーティーランド」のSP戦略はタイや日本という一つの国にはとどまらない。例えば、タイ人の旅行者や在日タイ人が、日本の「パーティーランド」と繋がれるよう、日本の店舗でタイ語メニューを用意したり、タイと日本双方でのプロモーションを連動させることを計画している。
経済のグローバル化に伴い、国境を越えた人の動きが活発化しており、人間の居場所は一つの所にとどまらない。タイと日本の間でも、旅行や商用、親族・友人訪問などの目的で人の移動が広がっていることに着目し、一つの国にとどまらない“トランスナショナル”(国境を越えた)なSP戦略を打ち出している。

売上高確保と他国への進出

一方、タイ進出では苦労もあった。特に大きかったのは、タイの反政府デモとクーデターだ。もともとは2013年12月のオープンを予定していたが、タイにおける政治・社会の混乱により、オープンを延期せざるを得なかった。
新興国ならではのカントリーリスクとも言えるが、石川氏や福木氏をはじめ担当者は仕事を進めることができなくなるなど、タイミングがずれ込んだことによる現場での影響は大きかった。
課題は商品の面でもあった。フローズンヨーグルトは、生きた乳酸菌を含む製品だ。だが、乳酸菌を含む製品をタイに持ち込むために許可を取ることが簡単ではなかったという。商品の要であるため、譲ることはできず、なんとかタイへ持ち込む許可を取得した。また福木氏は「タイ人スタッフに衛生観念などの考え方を理解してもらうのに苦労した」とする。言葉をはじめとする文化の違うタイで、日本の衛生水準や品質管理をスタッフに理解させ、実行してもらうのは生易しいものではなかったようだ。
とはいえ、「パーティーランド」はこれまでに結果を出している。今後も順調に事業を展開し、2014年にはタイ1号店の年間売上高を1億円にしたい考えだ。
さらに、タイ国内で年内に1~2店舗を増設するほか、「インドネシア・ジャカルタ、シンガポール、マレーシア・クアラルンプールなど、ほかの東南アジア地域にも『パーティーランド』の店舗を広げたい」(石川氏)とする。
そのため「現地でともに事業を展開するパートナーを募集している」(福木氏)といい、本格的に海外展開に乗り出す意向のようだ。成長と競争激化の中にあるアジアの飲食市場。品質と味を基盤に、積極的なSP戦略をしかける「パーティーランド」が、今後どうアジア市場で展開するのかが注目される。

(取材=巣内 尚子)

店舗データ

店名 パーティーランド サイアムパラゴン店
住所 991/1 Rama1 Rd.,Patumwan,Bangkok 10330
電話 02-610-7528
営業時間 10時~22時 (※施設の営業時間に準じる)
定休日 なし (※施設の営業時間に準じる)
坪数客数 12坪 14席
客単価 180~190Bバーツ(約540~570円)
運営会社 Richie Delicious Co.,Ltd

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