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【タイ発】日本の焼肉界のカリスマシェフ森田隼人が日本酒と和牛をテーマにしたコラボイベントを開催..

シェフ自ら厨房に立つ
この日のために厳選した日本酒を
葉隠の山本シェフ(右)とツーショット
あぶり石田の石田シェフ(中央)との日本酒談義にケンジズラボの中山シェフ(右)も登場
一日目の会場となった葉隠
二日目の会場となったあぶり石田
葉隠で供された特別メニュー
あぶり石田で供された特別メニュー

2009年にタイへの日本産牛肉の輸出が解禁されてから今年で8年。年々和牛の輸出量も好調に伸び、2016年には120トンがタイに輸出されるまでに成長した。この間、日系飲食店、タイローカル系飲食店ともに和牛を提供する飲食店も急速に増加。2014年のタイ人観光客へのビザ発給緩和による日本旅行ブームも手伝ってタイ人のあいだで和牛に対する関心が高まり、和牛ブランドはタイ人に広く認知されるレベルに達したとみられる。

このように和牛ブランドにとって追い風とも言える市場環境に新たな一石を投じるイベントが開催された。それは、六花界グループ代表、CROSSOM MORITAオーナーシェフの森田隼人さんが、10月31日と11月1日の2日間2夜連続でバンコクの日本食店2店鋪で自らが厨房に立ち、「日本酒と和牛」のコラボレーションイベントだ。

森田さんは2009年に東京神田のガード下にわずか2.2坪の立ち食い焼肉店「六花界」をオープン。その後、会員制肉割烹「初花一家」をはじめ、会員制肉懐石「吟花」、会員制焼肉バル「五色桜」など、肉と日本酒をテーマに会員制の店舗をつぎつぎと展開。2016年には、プロジェクションマッピングを使った演出でエンターテイメント性を前面に押し出したガストロノミーレストラン「CROSSOM MORITA」をクラウドファンディングでオープンさせ話題を集めた。さらに、2017年の9月には「日本酒造青年協議会」が主催の国内外に向けて日本酒とその文化をともに普及、啓蒙する日本酒アンバサダーである第12代「酒サムライ」の一人に叙任された。

今回のイベントをタイで開催したことの意義に関して、森田さんは、「私が食に携わる一番の理由は、そこに「同様に命があって、呼吸をしている」ということです。世界には様々な国と文化が存在しますが、みんな生きていて幸せになりたいと願っています。私は「食」でそれを実現したい。「健康な体、健康な食材、健康な精神」があって「おいしい」と思えたら、私はそれでもう平和なんだと考えています。
第12代酒サムライとして、日本酒=和酒と和牛を日本人の文化とし、今タイでブームを超えてカルチャーとして根付いた日本食の真価にチャレンジしたい。アジアでも貧富の差のあるタイで「和酒+和牛」を使って、先人が築いて下さったタイでの地盤を活用して、先人と一緒にもっと日本酒を価値あるものにする為にタイに来ました。しかし、日本とタイでは気候や文化・観念に差があります。ですから日本の背中を追いかけるのではなく、かつて日本がそうした様に、タイ独自の発展を遂げるべきです。」と語る。

さらに、実際にイベントを実施するにあたり、苦労した点を、「今回持ってきた食材は日本酒を含め20種類に及びますが、実際に欲しいものを日本から輸出するとなると、法律の部分で多分に問題が山積みです。そういった問題を解決する為に、技術・精神面での確認が必要でした。そして、実際たくさんの宿題をいただく事にもなりました。」と付け加えた。

今回の会場に選ばれたのは、懐石コースをメインに高級和食を提供する「葉隠」と、やきとり、肉巻き串を提供する炭火焼き居酒屋「あぶり 石田」。「葉隠」の料理長である山本祥弘シェフはタイ版「料理の鉄人 Iron Chef」での優勝経験があるタイの日本食界の第一人者。日本の「プラザ大阪ホテル」、バンコクの「Swissotel Nai Lert Park Hotel」での総料理長の経験もあり、日本の皇太子がタイに滞在中の料理人を務めた。「あぶり 石田」は、東京新橋の炭火焼き居酒屋「あぶり 清水」の海外進出1号店で、今年6月のオープン以来、連日満席の繁盛店で、バンコクで予約の取れない居酒屋として評判のお店。かたや、高級和食店、かたや大衆居酒屋この対象的な2店舗が、「日本酒と和牛」をテーマにした森田さんのバンコク初舞台となった。

初めて実現した在タイ日本人シェフとのコラボについては、「この2日間の開催を両日共満員御礼にて開催することが出来ました。しかしそれも全て、葉隠さんの山本シェフとあぶり石田さんの石田シェフのお陰です。スタイルの違う2店舗での開催は自分への挑戦でもありましたが、単価とスタイルの違いで食材の変化を勉強する最高の機会でした。お客様の変化もあり、もっと長く御一緒したいと我侭が出るくらい楽しかったです。このご縁が次回に繋がると確信しました。」と、満足した様子だった。

また、タイに対する印象については、「20年前に初めてタイに来て、それからの変化を外巻きに見ておりました。色々な方からお話を聞いたり、初のタイ訪問後も何度か実際に訪れる機会があったりで、急激に発展していっているのを感じておりますが、暖かい文化と人のイメージは変わりませんでした。我々日本人にとって快適であると同時に、タイの人々もまた日本文化に強い興味を持っており、それぞれの感覚と価値観の混ざりあうコミューンを作っていることがとても勉強になりました。理想的です。そして食に掛ける金額とテクノロジーに掛ける金額のバランスの違いに一番驚きました。とても情熱的で能動的で敬愛できる国ですね!」と語り、タイに対する印象がこのイベントをキッカケにいままでに増してアップしたようだ。

今後のタイでの展開については、「来年、食(和酒と和食)とテクノロジーとチャリティーのイベントを開催したいです。今、タイで日本食に係る皆様と一緒に、支えて下さるタイの人々に貢献出来る、還元できる、循環できるイベントを開催したい。日本の根底にある文化と、タイで発展を遂げている文化の繋がりを、もっと加速的に。その場で経験し、発信して頂けることが大切です。
しかし私が一番考えているのは日本酒のタイでの啓蒙で、酒蔵にも協力して頂き、ただ飲むのではなく、知識も一緒に知っていただく場を作ります。継続的に開催できる理念のあるイベントが出来ればと思っています。そして、私がタイに出店するプランはありません。だからまたコラボディナーを開催したいです」と抱負を述べた。

JETROの調査によると、タイの日本食レストランは、現在、2,774店で引き続き前年比2.2%の増加傾向にあるが、首都バンコクに限ってみると、前年比0.8%の減少になった。これは、2009年の調査開始以来初めてのこと。業態別にみると、居酒屋、焼肉店が競争の激化で退店が目立つとされる。これまで順風満帆と見られてきたタイの日本食店も淘汰の時代に突入した感がある。今回森田さんが「酒サムライ」として、和牛と日本酒のコラボレーションイベントを開催したことにインスパイアされ、競争力のある新たなメニュー開発、業態開発につながっていくことに期待したい。

(取材=まえだ ひろゆき)

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