「イカセンター」「魚バカ」「フレッシュUOBARU」「釣船茶屋ざうお」「鳥波多(多に濁点でトリハダ)」「れば屋」「猛禽」の、7業態23店鋪を展開するスプラウトグループ(神奈川県川崎市川崎区、代表:高橋誠太郎氏)。魚や鶏など素材一点型の専門店を繁盛させたことで、業界からも注目を集めている企業である。同グル―プは、現地法人スプラウトエイジアタイランドを立ち上げ、3月15日、タイ・バンコクに焼鳥専門店「TORIHADA スリウォン本店」を海外進出1号店として出店。シーロムの二等立地に位置する同店は、ランチで1日50~60名を集客、ディナーでは連日満席となるほどの人気店となっている。
今回のアジア出店について、高橋氏は次のように話す。「海外進出の際には、その国に合わせ『日本でできない新たな業態をやりたい』と考える方が多いと思います。しかし、私はそれができない。それなら、日本でうまくいっている業態をそのまま持っていこうと考えていました。はじめ商業施設のオファーを頂いたことから、アジア進出に意欲的になったのですが、その施設は食事メインのテナントがほとんどで、我々がやろうとしている店のターゲットとは違うのでは?と疑問を持ったのです。私たちが日本でやってきた業態は、魚や鶏に特化した専門店でアルコールも楽しめるお店。食事処が集まるフロアでは、難しいと感じたのです。そこで商業施設のオファーを断り、自分の得意な業態で勝負できる物件を自分で探そうと思い直しました」
先述したように、「TORIHADA」は裏通りの二等立地に位置する。競合が少ない穴場物件を、高橋氏自らが歩いて探したという物件だ。日本でも、穴場物件で繁盛店をつくることを得意としていた同グループの経験が、ここでも活かされた。
食材の99%は現地調達。タイでは、日本と同じクオリティのフレッシュな鶏を仕入れることができるという。内臓までを卸してくれる業者は少ないが、現地の業者と鮮度維持や衛生管理などを共に考え、内臓肉の扱いも実現した。現在、焼鳥メニューの8割は日本店と同じメニューや鍋などを揃え、客単価B1,000と日本円で3,000円相当を確保する。一方でランチは、現地オリジナルの「鶏メンチ定食」(B210)や「とりはだ鍋定食」(B250)などを6~7品揃え、客単価はB180と、現地人でも日常的に通える価格帯で推移する。
現在の客層は昼で現地人と日本人が半々、夜になると日本人が8割まで伸張するという。「まずはディナーで日本人の評判を上げ満席にし、徐々に現地の方を集客したい。ですので、第一段階はクリアですね。今、現地の方々には日本食の食べ放題が人気を呼んでいます。価格はB300~400程度と、カジュアルなところが多いようです。一方で、『TORIHADA』は、安い日本食を提案するのではなく、『焼鳥屋で食べるということはこういうことなのだ』というシーンの提案をしています。これは私の考えですが、今回の出店が海外進出であるという概念はありません。日本と同じように、日本の戦略で他国でも繁盛店を作ることが理想なのです」
今後は隣接する店鋪を借りて、ウェイティングにも利用できる日本酒バルを構想中という高橋氏。また、日本で展開している活魚専門店を、アジアの主要都市に出店することも検討している。現に、香港に活魚を輸送する流通確保の実験も行なっている段階だという。「『TORIHADA』は、まだ繁盛店をつくっている途中です。これが安定してくれば、バンコクで10店鋪は考えたいですね。また企業としては現地人社員を雇用し、現地の方が現地人向けの業態を作れるようになるまで育てていきたいと考えています。タイ人や他の国の方々もそうですが、我々が経営理念として掲げる“ビジネス=エクスタシー”を感じられる、おもてなしの気持ちがある方々が多いと思いますね」と高橋氏は語る。
(取材=虻川 実花)
店舗データ
店名 | TORIHADA スリウォン本店 |
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住所 | 43/1 Silom-Surawong Condo Soi Anumanrajdhon, Bangrak, Bangkok |
電話 | 02-634-5860 |
営業時間 | 11:30~14:00(L.O.13:30)、17:30~23:00(L.O.22:30)、土日祝16:30~23:30 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 30坪 55席 |
客単価 | ランチB180、ディナーB1000 |
関連リンク | スプラウトグループ |