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生産者直結という新しいビジネスモデルで、現在国内に152店舗（※7月16日現在、ライセンス店舗込）を展開するエー・ピーカンパニーが昨年10月のシンガポール1号店に続き、同国2店舗目となる「TSUKADA NOJO」を7月15日にオープンすることとなった。今回は、海外事業担当役員でもある取締役開発本部長・川俣雄二氏にお話を聞いた。

「当初の海外展開候補国はインドネシア、マレーシア、シンガポールの三ヶ国でした。この中でシンガポールを選んだ理由は、独資で出店できること、1人当りのGDPが日本より高く、食への感度が日本人同様に高いこと、また現在のシンガポールはASEAN内での情報発信基地の役割を担っているところに着眼しました。シンガポールは移民の国であり、外食文化が強く根付いています。もちろん日本からの外食企業進出も進んでおり、競合の多い国ではありますが、当社が日本で確立したビジネスモデルをしっかり出すことができれば、受け入れてもらえると踏み海外進出一号店はシンガポールに決めました」（川俣氏）

とはいえ、検疫上の規制などもあり、日本と全く同じ塚田農場メニューを展開することは出来なかった。また、あまり酒を飲まないシンガポーリアン向けに展開性のある業態にするため、輸入可能食材と現地嗜好を考慮して鍋料理をメインにと考えた。本物の食材にこだわり、スープは同社の売りである「みやざき地頭鶏」の鶏ガラを8時間以上煮込んで作る天然コラーゲンスープを日本から持ってきて、味に厳しい現地の客にも通用する"美人鍋"を作り上げた。また現地の人にモニタリングをして、味や価格設定を調整し、自分好みの辛さや濃さにアレンジができる工夫を加えた。鶏肉はシンガポールに近いマレーシアで育てられシンガポール国内でと畜される鮮度の高い鶏を使用している。

また、メニューや味だけでなく、海外での雇用は大きな課題となっている。現在日本人は現地に3人いるが、労働ビザの取得や現地での雇用は簡単ではない。シンガポールは経済の成長に伴ない、雇用も売り手市場なので"飲食"という枠での雇用希望者は少ない。同社では従業員満足度を重視しているが、それは海外で展開して行く中でも同じく、習慣の違いなどの問題を抱えつつも働きたいと思える環境作りを目指し、その姿勢がどう通用するかも一つのチャレンジといえる。「現地の人の教育は難しいと言われてきましたが、本質は変わらず、モチベーション高く働ける人は沢山います。自分たちの価値をきちんと伝えていけば、僕らの想いに共感して働いてもらえると実感しています」（川俣氏）

「TSUKADA NOJO」はオープン当初、ほとんどが日本人客であったが、8ヶ月たった現在は現地客の割合が8割を占める。そんなシンガポーリアンの胃袋をがっちり掴んだ「TSUKADA NOJO」の2店舗目の立地は、チャイナタウンである。「ローカルの人にご利用をいただける店舗の展開が目的なので、ローカルの人が集まる場所にも出店して行きます。」（川俣氏）

海外でも進化する同社は、日本でのビジネスモデルである生産者直結をシンガポールでも手掛けようとしている。店舗展開については12月に同国にて3号店の出店も予定しており、中長期的にシンガポール内で10店舗程度の出店を計画している。その店舗展開と平行して1次産業への参入準備も進んでいる。今後はASEANを含め、広域アジア圏にも展開を考えているという。常にチャレンジをし続ける姿勢は、日本国内のみならずアジアでも大きなムーブメントを起こしていくだろう。そんな進化し続ける同社の動向に、ますます目が離せない。

（取材＝板橋 葵）

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