現在日本に6店舗、バンコクに6店舗を展開するオープンダイニング(代表 長田大輔氏)が『天下一 焼きとん 焼き鳥 なぎ屋 THE SCENE』を2月に、系列店である『大衆酒場 寅圭』を昨年オープンさせた。
「元々旅好きで海外を旅行しているうちに、海外出店を視野に入れた飲食店経営を日本で始めようと決心しました」と話す長田氏は、飲食店で働く幼なじみと一緒に「なぎ屋」を開業。日本国内での出店後、2010年にバンコク1号店をオープン。その後次々と新店舗を増やし、今やタイ人、日本人を問わず、多くの常連客に愛される人気店だ。
日本では中小でも、バンコクの現地の人々にとっては大手と同じ日本食レストランなので、十分に勝負が出来るはず、と海外進出をしたが、困難なこともあった。
今でこそバンコクには沢山の日本食レストランが日本から進出してきたが『なぎ屋』はそれらの先駆けである。まず、独資で出店できないタイでは地元企業との合弁の必要性がある。さらには法律や文化の違いで、大きく戸惑ったこともあるという。人材雇用に関しては、国民性の違いを受け止め、真摯にコミュニケーションを取ることを常に心がけた。「言葉の壁はありますが、日本よりも出店に関して良い部分もあるとは思います。ですが、環境は日本のように恵まれてはいません。停電など良くあることですし、洪水の時は大変でした。歩いている人とボートを漕いでいる人が、同じ道ですれ違っていましたからね」(長田氏)
内装にも力を入れ長田氏自ら設計、施工管理をして店の雰囲気作りを大切にしている。日本食ということで、和を感じられる木を基調とした昭和レトロな作りにし、気持ち良く食事が取れる客席同士の距離感を意識した店内からは、長田氏の強いこだわりが感じられる。
現地での客層は地域によって大分変わってはくるが、平均して日本人と現地の人が半々であり、メニューも現地のニーズに合わせ、焼き鳥のみではなく寿司や天ぷらなどを取り入れている。また昨年オープンした『寅圭』では”海鮮焼肉”という新しい日本食のスタイルを広め、今年店舗規模を2倍に拡大するなど人気を博している。どちらも味は日本と変えずに提供しているが、食材に左右される部分も多少はあるため、現地でも良い食材があれば取り入れるなどの工夫をして、味の向上を常に目指している。
大手チェーンでも同一都市内での展開に苦戦する中、確かな地位を確立できた理由は”維持すべきレベルを少し高く意識すること”を実行し、形にしているからだ。
「バンコクに根付く店作りを心がけ、15店舗位までは店を増やしたいですね。また今後は、屋号の権利やノウハウを提供したフランチャイズでの展開も視野に入れています。あと、他にも海外を旅して心惹かれる国があったら、店を出してみたいなとは思っています。」(長田氏)
現地に住む日本人とタイ人、双方のニーズに応えながら拡大していく『天下一 焼きとん焼き鳥 なぎ屋』は、日本料理店がバンコクに進出する際の、ひとつの手本と言えるかもしれない。
(取材=板橋 葵)
店舗データ
店名 | 天下一 焼きとん 焼き鳥 なぎ屋 THE SCENE |
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住所 | The Scene Town in Town 1373 Soi Ladprao 94 |
電話 | 02-108-5913 |
営業時間 | 11:00~22:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 30坪 60席 |
客単価 | 400B |
運営会社 | 株式会社オープンダイニング |