ホーチミン市の中心部に2018年6月にオープンした「餃子のチカラ」。
日本料理店がひしめく日本人街の一角に佇む。外壁は見通しの良い全面ガラス張りで、通り行く人たちの注目を集める。7坪の店舗はコンパクトで機能的。至近距離のキッチンから、鉄鍋のぶつかる音が響き、食欲をそそられる。
共同経営者の一人で、店のマネジメントを一手に担うのが後藤政文さん。大分県出身で、ロイヤルダイニング(東京都国分寺市)で、経営と店舗管理のノウハウを培った。ベトナムとの出会いは2008年。ホーチミン市内に日本料理店「大黒屋」を立ち上げるため赴任。その後、同業の日本人経営者たちと親交を深め、ベトナムへの愛着も増したという。2016年には独立し、これまでの経験とキャリアを生かし、日系飲食店のアドバイザーやプロデュースを手掛けてきた。
ホーチミンの飲食店市場の変遷を俯瞰してきた中で、メニューを絞った”専門店”の需要を近年、特に体感していたという。中でも餃子は、自分の好物でもあり、ここ最近ではフランスなど欧米でも注目を集めている。”商売としても面白い”と構想を温めていたそうだ。ただし、餃子の専門店は日本では看板メニューだけで勝負できるが、ホーチミンでは二枚看板が必要だと分析。餃子を軸に、唐揚げを提供する現在の形に固めた。
路地裏にありながら、条件の良い角地の物件が空き、出店を決めたという。
看板メニューの餃子は「東京焼餃子」(78000ドン、約380円)を軸に、水餃子や、厨房を任せているイタリアンシェフの特性を生かし「トマトチーズ餃子」(11万ドン、約550円)など、バラエティ豊か。男女問わず、常連客を獲得している。
カウンターでは、餃子とビールのみの「ちょい飲み」の利用も多く、テーブル利用との回転数のバランスも良いという。利用客の7割は日本人だが、遅い時間帯は欧米人の利用も目立っている。メニュー数をもっと増やしたいが、厨房や店内のスペースの制約もあるため、現在の”バルっぽい空間”で支持されている既存店舗を軸に、今後の展開を構想中だ。
餃子の美味しさは評判を呼び、冷凍でのコンビニや小売販売も打診されたそうだが、満足のいく品質と量を提供するために、店舗営業に当面は注力するという。
後藤さんは「まだ専門店は市場に少ないため、”専門”を持つ店は強い」と話す。
今後は日本各地の名物鍋料理や、ホーチミンで人気を集めつつあるロール寿司など、ローカル市場向けの小箱店舗(20~30席)の展開にも意欲を示している。
(取材=迫田陽子)
店舗データ
店名 | ギョウザノチカラ |
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住所 | 8a/h1 Thái Văn Lung, Bến Nghé, Dist. 1, Hồ Chí Minh |
電話 | 093 958 49 51 |
営業時間 | Lunch 11:30am~2:00pm、Dinner 5:00pm~12:00 (L.O. 11:00pm) |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 7坪 16席(カウンター6席含む) |
客単価 | 28万ドン(約1400円) |
オープン日 | 2018年6月 |