5月20日、ホーチミン市内の”日本人街”として知られる1区のレタントンエリアに「串居酒屋 串太郎 KUSHITARO」がオープンした。「串太郎」は串揚げをメインとした居酒屋で、業態の異なる3店舗の各オーナーが共同出資している。
オーナーは、ホーチミン市内で和食店「Imotaro」、焼肉専門店「Nikutaro」、日本酒バー「Saketaro」の”太郎系”3店舗を展開する吉村真太郎氏。そして、渋谷の焼肉店「神泉ホルモン 三百屋」オーナーの三百田和義氏、さらに銀座と日本橋で蕎麦店「よもだそば」を展開する九十九章之氏の3人。出店の経緯は、「串太郎」が入居したビルで人気ラーメン店を運営する日本人オーナーから、空きスペースの有効活用を持ちかけられたことがきっかけ。委託を受けて、出店することになった。3人は、日本と東南アジア(シンガポール、プノンペン)での事業展開を通じて、共同出資や情報交換などを行っており、それぞれの経験や強みを生かした次の店をホーチミンで、と意気投合したという。
ホーチミンでは和食人気もあいまって、ローカル資本や日系が入り乱れた和食店のオープンが相次ぎ、競争が激しい。その中で、出店に伴う初期投資を回収できずに撤退する店も少なくない。だが、「串太郎」は店舗規模は限られるものの、空きスペースの有効利用で、初期投資を抑えることができた。加えて、前述の”太郎”ブランドのバックボーンがある。在住日本人客が大勢を占めるレタントンエリアで先に営業する3店舗は、メニューやサービス面でいずれも一定の評価を受けており、知名度も高い。もっとも大きな強みは、アジアの戦略を熟知する3人のオーナーが英知を結集したことにある。前述の吉村氏は、ホーチミンに常駐し、5年間の在住経験と既存店舗でのノウハウを提供。シンガポールでも蕎麦店を展開する九十九氏は、串揚げのタレとして「つゆ」を提案。素材は無化調で、仕込みから全て店舗で行う。100%日本産の鰹節と出汁を使い、2週間寝かせたこだわりのつゆは、ランチで提供する天丼(17万ドン)や、グランドメニューの串天ぷら(一本15000ドン〜)にも使われている。三百田氏は、渋谷とプノンペンで人気焼肉店を経営する実績から、内装とコンセプトを担当。大衆居酒屋をイメージし、深みのある板壁に掛けられた看板が古き良き昭和を思わせる。メニューは40種類を超える串揚げ(一本12000ドン〜)をキラーコンテンツに、おでんや一品料理も提供する。
近年、日系飲食店の増加に伴い、在住日本人のニーズも多様化してきた。”何でも屋”では、今後の生き残りは難しいと吉村氏は分析する。メニューやサービス、内装に至るまで他店舗との細やかな差別化を課題とし、今後の戦略を見極めるという。ローカル客への訴求は、日本人客の定着化を図ったのちに見極めるつもりだ。来客数の7割を日本人と見込み、”美味しいものを届けたい”を合言葉に、素材にこだわったメニューの提供に注力している。
(取材=迫田 陽子)
店舗データ
店名 | 串居酒屋 串太郎(KUSHITARO) |
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住所 | 2F 8/5 Le Thanh Ton Street Ho Chi Minh City, Vietnam TPHCM |
営業時間 | Lunch【Mon~Fri】11:00am~2:00pm 【Sat・Sun】11:00am~3:00pm 、Dinner 【Mon~Thu・Sun】18時~23時【Fri・Sat】18時~24時 |
定休日 | 旧正月 |
坪数客数 | 32平米 16席(テーブル4人掛け 3テーブル、カウンター4席) |
オープン日 | 2017年5月20日 |
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