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東京すしアカデミーが「銀座いわ」香港店をオープン。世界に「SUSHI」を発信

日本から運んだひのきのカウンターが落ち着いた雰囲気をかもし出す香港「銀座いわ」。純日本の空間が広がり、訪れる人を寿司の世界に引き込む
香港「銀座いわ」は、日本直送の新鮮な食材と職人の高い技術により、富裕層を中心に現地の人々を引きつけているという
香港「炭火肉料理 銀座いわ」。宮崎の尾崎牛をメインにさまざまな料理が楽しめる上、ゆったりとした造りが好評のようだ
アジア展開に意欲をみせる東京すしアカデミーの福江誠社長。法学部出身で、もともとコンサルタントだったが、寿司職人養成スクールのパイオニアとなった。45歳 富山県出身

既に世界の共通語となっている「SUSHI」。江戸前の本格派から新たな素材を使った斬新な寿司まで世界の人々を魅了する。そんな中、「SUSHI」の発信で独自の存在感を示すのが、寿司職人養成校「東京すしアカデミー」(東京都新宿区、代表取締役・福江誠氏)だ。その事業範囲は人材育成にとどまらず、店舗運営も推進。10月中旬には仏ミシュランの1つ星を獲得した銀座の寿司店「銀座いわ」の香港店をグランドオープンする。福江誠社長は「中国や東南アジアでも多店舗展開を目指す」とし、各地で事業を広げる方針だ。

ベテラン職人の目利きと抜群の立地が強み

東京すしアカデミーは9月初旬、「銀座いわ」とタッグを組み、香港に同店の新店舗をソフトオープンした。グランドオープンは10月18日を予定する。「銀座いわ」は、「久兵衛」のホテルオークラ店や銀座「鮨 かねさか」で修業を積んだ岩央泰氏が店主を務める有名店だ。
香港の新店舗は東京すしアカデミーが店舗運営と経営を担い、「銀座いわ」が人材面を担当。さらに、寿司は食材を見分ける目利きが重要なため、「銀座いわ」は香港店で使用する食材の選択や味の面にも深く踏み込み、店舗にかかわることになる。
新店舗が立地するのは、香港の金融センターとして発達し、現在では高級ブランド店や多数の飲食店が軒を連ねる中環(セントラル)。同地の高層ビル「亜州太平洋中心」の30階に「銀座いわ」、29階に炭火焼き肉料理の「炭火肉料理 銀座いわ」をそれぞれ運営する複合業態となる。

アジアに「本物の寿司」を

新店舗のコンセプトは、銀座で出している江戸前寿司をそのままの質とサービスで提供すること。福江社長は「本物の寿司を出したい」と意気込みをみせる。
内装を含めた店内の雰囲気から料理、サービスまで銀座の店舗をそっくりそのまま持ってくるイメージだ。そのため最高級の食材を日本から空輸で取り寄せる。
客単価は日本円換算で、寿司店が夜の利用 約3万円、ランチでは約7,000円から約15,000円、炭火焼き料理店が夜の利用で約2万円から。
東京すしアカデミーは、こうした強気の価格も香港では受け入れられると読んでいる。アジア経済のハブである香港には、富裕層が少なくない上、海外のビジネスパーソンも多いからだ。こうした層は日本の高級店の味を知っている上、銀座店を訪れたことのある人も一定数いる。
香港には寿司店は多数あるが、カリフォルニアロールなどアレンジ商品を提供する例が多く、純粋な江戸前寿司を売りにする「最高級クラスの寿司店はほとんど見当たらない」(福江社長)という。
この空白地帯に最高級の江戸前寿司を持ち込むことで、舌の肥えた香港の富裕層を取り込む狙い。それにより、東京すしアカデミーと「銀座いわ」のブランドをアジア各地に広げていきたい考えだ。

工事遅れなど苦労も

一方、最高級の寿司店を目指す中で、店舗設計は日本人が担当するとともに、ひのきのカウンターといった内装を日本から運ぶなどしたが、日本とは異なる工事の進め方には苦慮した。結果的に工事は予定より遅れ、オープンは当初計画の6月からややずれ込むこととなった。
ただし、苦労の甲斐もあり高級感あふれる内装を実現した上、9月初旬にソフトオープンして以降、客足は順調。主に富裕層が家族やカップルで利用するなど個人利用が多く、当初の狙い通り当地の人々を引きつけているようだ。さらなる顧客の取り込みに向け、10月からは香港の主要メディアでの広告展開もスタートしている。

香港・中国本土・東南アジアで出店拡大へ

こうした展開は、店舗事業を寿司職人養成校と並ぶ経営のもう一つの柱にしようとする東京すしアカデミーの戦略の一環だ。同社は既に、西新宿と神楽坂でそれぞれ食べ放題の寿司店「すしアカデミー」を経営するほか、海外でも中国・広州と香港で直営の寿司店「誠寿司」を運営する。
店舗事業の拡大に向け期待するのは、成長著しいアジア市場。東京すしアカデミーは今後、アジアで事業を広げる計画で、香港では2014年、さらに1店舗増やし、将来的に10店舗ほどの展開を見込む。これに伴い、香港事業ではまず年商6億円を目指し、その後は店舗網の拡充により年商30億円規模に引き上げたい意向だ。
ほかにも中国華南地域や東南アジア諸国などへの店舗設置も見通す。こうした取り組みにより、アジア事業を数年内に年商100億円規模にしたい考えだ。

シンガポール校を開校

東京すしアカデミーの事業展開をみる上で、思い起こされるのが米国のジャーナリスト、サーシャ・アイゼンバーグが書いた『スシエコノミー』(日本経済新聞出版社、2008年)だろう。同書は、日本生まれの寿司が米国をはじめ世界各地で独自に発展し国際的な料理になるとともに、マグロの世界的な取引を含め寿司の経済的な影響が拡大している様を描き出している。
そんな寿司のグローバル化に足並みを揃えるように、東京すしアカデミーは2002年に開校。これまでに2,000人を超える卒業生を輩出し、卒業生500人超が海外で寿司職人として働いている。学生には、伝統的な寿司の世界ではマイノリティーだった外国人や女性も少なくない。
4月には、シンガポール校を開校した。以前から西新宿にある本校も海外から学びに来る外国人が多く、最近では経済成長著しい東南アジア諸国の出身者も少なくない。そこで、東南アジアの中心であるシンガポールに学校を設け、英語による授業を提供し、寿司の技術を学びたいというアジアからのニーズの高まりに応える格好だ。
世界で花開く寿司文化。東京すしアカデミーは人材育成と店舗展開により、世界の寿司市場をますます活発化させるけん引車となりそうだ。

(取材=巣内 尚子)

店舗データ

店名 銀座いわ
住所 30 Floor ,Asia Pacific Centre,
No. 8 Wydnham Street,Central, Hong Kong
電話 +852-2619-0199
営業時間 ランチ  12:00-15:00(L.O.14:30)
ディナー 18:30-23:00(L.O.22:30)
定休日 年中無休
坪数客数 24席(カウンター16 個室8)
客単価 ランチ600香港ドル、ディナー2,500香港ドル
関連リンク 東京すしアカデミー
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