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日本国内での事業規模縮小を経て、シンガポールへ進出! 鮮魚業態で価格破壊を起こし、人気寿司店へと成長した「活けいけ丸」、「黒尊」が話題!

シンガポールの「黒尊」。重厚な雰囲気の日本食店に仕上がっている。
黒尊のカウンターには、江嶋氏が開拓した流通経路を経た鮮魚が並ぶ。
明治屋ビル内に入居する「漁師寿司 活けいけ丸」。日本人も多く来店する。
「シンガポールでの日本食の価格破壊」を起こした代表の江嶋氏。


寿司業態「黒尊」、「あぶらぼうず」、「活けいけ丸」と、ワイン業態「KUSHIKATSU ワインバル BAKUBAKU」の4店鋪を展開するヘンリーブロス(東京都港区、代表取締役:江嶋力氏)。「魚好き」を公言する江嶋氏が、次の展開地として目をつけたのがシンガポールだ。2011年3月に炉端焼き業態「黒尊」を、2012年10月に回転寿し「漁師寿司 活けいけ丸」を出店。その経緯を江嶋氏は「100%子会社を作れるのがシンガポールです。同国は、法人税が上限19%、株主配当が無税など、税制制度が企業に有利なのです。合弁での進出はリスクが高いと考えていたこともあり、シンガポール進出に魅力を感じたのです」と話す。

当時、シンガポールでも刺身などの魚を扱う飲食店が多かった。しかし、どの店も高単価であり、そもそも美味しさをあまり感じられなかったという。そこで「もっと日本の多種多様な地魚を持っていけないか」と考えたのが、海外進出のはじまりだった。江嶋氏は飲食店で独立した頃、自ら日本全国の漁港を見て回り独自の流通を開拓。中央流通にのらない地魚を扱うことで人気店へと成長させ、外食での地位を確立してきた。また、魚の流通のために設立した水産会社・江嶋屋を運営している強みから、今回の流通には全日空と提携。全国から築地に集まった魚介を羽田空港へ運び、そこからシンガポールへと届ける仕組みを構築し、日本産の珍しい魚が食べられるという付加価値を提供することに成功した。

これまでのシンガポールでの日本食は、客単価400~800シンガポール・ドル(SGD)程度の高級寿司、30~40SGDの回転寿し(現地での回転寿司のほとんどは、総合日本食レストランのイメージが強い)というのが主流であった。その中間層に目をつけた江嶋氏が起こしたのが「シンガポールでの日本食の価格破壊」である。「黒尊」は接待に使える居酒屋として人気が高いが、客単価は120SGDほど。「活けいけ丸」に関しては一皿1.8~6.8SGDで揃え、客単価は日本の寿司のクオリティーを維持しつつ33SGDと、驚くほどの低価格を実現した。それでも原価率は「日本店とほぼ同率」にできるのは、前述の流通力があるからこそだ。「現地では日本食で贅沢をすることがステータスと考えられています。そのため、ローカルでも高所得者が多く来店しますね。そういった人たちは比較的客単価が高いです」。「活けいけ丸」は78坪98席で日に600人を集客するなど、シンガポールNo.1の人気寿司店へと成長を遂げている。

いまでこそ人気日本食店となっているが、出店は苦労の連続だったという江嶋氏。第一の関門は、海外出店資金の確保。「日本の銀行は海外出店資金融資をなかなか下ろしてくれません。とくに中小企業には」。そこで江嶋氏は西武信用金庫の担当者と親しくなることからはじめ、何度も交渉をしながら4100万円の融資を受けた。しかし、その後のシンガポールでの店鋪工事でも苦戦を強いられる。それは、工期が5ヵ月もかかってしまったことだ。「こちらの要望通り進まない、しかも仕事をこなしてくれない。そんなんで引き延ばされてしまったんです。これまで海外出店をしてきた人の話を聞いてきたので、僕が値下げしすぎたんでしょうね(笑)。けれど、向こう(の企業)は多額の費用を支払わせようとするので、毅然とした態度で応じなければこちらが損をするだけです」。初店鋪は苦労の連続ではあったが、2店鋪目は前店の経験から気心の知れた施工会社に依頼。順調に出店することができたという。

「いまはシンガポールで順調ですが、言ってしまえば僕は負け組ですよ(笑)」。シンガポール出店前には、震災の影響もあり都内の経営不振店3店鋪を閉店している。しかし、国内事業を縮小することで、海外出店により注力することができたのだ。今後は、国内ではM&Aを考え、海外事業に本腰を入れる方針だという。「新規店鋪の出店予定は、秋に接待できる寿司店を、あと『活けいけ丸』の2店鋪目を。シンガポール以外では、スリランカやアイルランドも検討していますね。目的は日本食の普及以外に、日本の魚を海外に売ることで日本各地の地域活性化を考えたいのです。"日本の漁港に外貨を"が僕の目標ですね」と江嶋氏は語る。

(取材=虻川 実花)

店舗データ

店名 黒尊(GINZA KUROSON SINGAPORE)
住所 30 Robertson Quay #01-10/11 Riverside View Singapore 238251
電話 65-6737-5547
営業時間 11:30~14:00、18:00~24:00
定休日 無休
坪数客数 66坪 102席
客単価 120SGD
運営会社 ヘンリーブロス株式会社
関連リンク ヘンリーブロス

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