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インタビュー

【タイ発/新型コロナ特別企画①】バンコク居酒屋王の激白 SHAKARIKI432 Co.,Ltd. President & CEO 清水友彦

2020年、全世界を襲ったCOVID-19(コロナ)による経済危機。タイでも3月に外国人の入国を禁止し、現在も一部のVISAを持った外国人以外の入国は厳しく制限されている。タイ全土に発令されている非常事態宣言も毎月延長を繰り返し、すでに8ヶ月がたった。

このような状況下ではあるが、内需に支えられた外食産業は、6月の外出禁止令解除以降着実に回復に向かっている。依然として、観光客に依存していたリゾート地や都心部の商業施設などを除けば概ね2月前の水準に戻った所も多い。特に、タイ人の来客が殆どを占めるバンコク郊外のショッピングモールなどは大きく集客を戻している。

今回インタビューをお願いしたのは、タイ国内で約30店舗の居酒屋チェーンを展開する「しゃかりき 432"」の清水友彦さん。今年の4月には全店舗の売上げが対前年比4%まで急落し、その後も店内飲食の禁止、アルコール提供の禁止などで5月は12%、6月は35%と危機的状況に直面したが、7月以降順調に回復し、現在では、95%まで回復を成し遂げた。

3月以降の危機的状況に際して、どのような対応策を採ったのか。V字回復に至る経緯。さらには、今後の展開に対するビジョンについてうかがった。


―コロナウイルスによる非常事態宣言直後弁当の宅配と持ち帰りの営業をはじめましたね。
清水: あれも最初は不調だったんです。基本的に「しゃかりき」のお客さんは9割がタイ人やからな。日本人はと言うとまず、自分の行ってる店を助けるじゃないですか。「しゃかりき」と違って、日本人が店に立って接客して、日本人の常連が多い店が強いわな。完全に負けてました。でも「しゃかりき」の強かった部分は配達のエリアが広かったってこと。あと配達も自分とこで動けたってことです。配達料も取らずに、自社便でスクムヴィット以外のエリアもカバーできたってことです。俺も自分で配達して回りました。 店舗あたり1万B(バーツ)くらいです。4月は前年比4%くらいの売上でした。

―デリバリー営業のターゲットはどんな層でしたか。
清水: 最初の1か月くらいは日本人のお客さんがほとんどでした。弁当を食うのは日本人だけだし。それが、4月の終わりくらいから店舗の範囲を広げたんです。バンコク郊外のバンナーエリアとか。そしたら売れだしたんだけど、タイ人は弁当あまり食わないから。だからアラカルトとか寿司セットとかやったんです。そうしたらバンナーやラマ9エリアの日本人からも注文が入りだしました。そしてホームページからもオーダーできるシステムを入れて、タイ人でもそれ見て数量入れれば注文できるようにしました。それでスムーズに配達できるようになったんです。

コロナを機にカラオケ付個室を増設



―5月からは店内営業できるようになりましたね。
清水: 店内営業できるようになったけど、店内飲酒は無理やったし、営業時間も22時までだったし、ほぼほぼ売上げにならなかったんです。タイ人はまず食べに来えへんし。もうその頃だとお客さんが家飲みになれてきたから、デリバリーでパーティーセットとかのオーダーはあったけど。わざわざ酒も飲まれへんのに店には来えへんですわ。引き続き弁当営業もしとったけど、伸びもせず減りもせず停滞状態でした。

―そのあと6月の後半から外出禁止令が解除されて、店内での飲酒もできるようになりましたが。
清水: 飲酒解禁が6月後半からだから、7、8、9月は戻ったんです。対前年比80%まで回復しました。海外旅行に行かれへんからタイ人がタイ国内で消費するようになりました。日本人は減ってるけどその分をタイ人でカバーしてた感じです。10月も引き続き同じように回復してて全店が対前年比80%くらいまでは回復しましたわ。

―バンコク周辺に30店舗以上のお店がありますが、お店ごとの回復に差はありましたか。
清水: タニヤ、パタヤ、ソイ11(スクムヴィットソイ11)が駄目やったです。ソイ11全然駄目だったんですぐ閉めました。タニヤはそれでもオフィスワーカーが来てたからやや戻して対前年比60%くらいまでは回復しました。いまでもそれくらいやけど。それ以外の店は戻ったんです。アソークやエカマイが改装工事中で売上げが行かなかったくらいで他はほぼ戻った。結局観光客で持ってたエリアは崩壊ですわ。これは国境が開かん限り戻らんでしょう。
タニヤの場合は、客層が一気に変わった。それまで来なかった若いタイ人が来るようになったんです。多分来やすくなったんだと思う。カラオケ店が少なくなったから。あの大通り(タニヤ通り)も普通に歩けるようになったしな。爽やかになった感じがします。あと、タイ人の日本食に対する傾向が変わった気がします。


7月15日には8周年を迎えた



―では、コロナ以降で変化したタイ人の嗜好の変化についてお聞かせください。
清水: 5、6月くらいからタイ人のインスタグラマーとかユーチューバーがどんどん日本食を紹介しだしたんです。そのへんから今までフューチャーされてなかった日本食屋が広まっていった。今までタイ人が行かなかった日本食屋に行くようになったんですね。一般のタイ人と感覚が近いインスタグラマーとかユーチューバーが個人の意見であそこのあれがうまいなんてことを紹介するようになった気がするんです。小さい店で日本っぽい雰囲気の店に興味を持ち始めたんじゃないかなと思ってます。
だからタイ人経営のおまかせ寿司やら、居酒屋やらが沢山増えたんです。しかも今、飲酒運転の検問が厳しくなってるから、タイ人が多く住んでる郊外にそういうお店が増えたんです。タイ人同士でお金を出し合って自分が感じた日本を表現した日本食屋を作ってんです。味の方も日本に行ったタイ人オーナーが作ったもんだから以前のなんちゃって日本食屋とはレベルが違うんですよ。


―では、コロナが収束しつつある中どのような対応を考えてますか。
清水: どう見切りをつけるかを考えていこうと思ってます。もう5年経ってる店も多なってきてるから、まだお金を生みそうな店は改装をして、そうでない店は閉めて他にいい場所を探すとか。アソーク店、エカマイ店、日本街店はまだ伸びしろがあるって判断したから、カラオケ付きの個室を作って少しアッパー層を狙っていく。実際、カラオケは当たりでした。週末は予約取られへんし。しかも、団体客がみこめるから。SNSはインスタとフェイスブック。あと、LINE@を使ってる。囲い込みをして今来てるお客さんを強くするってイメージです。

―今後、メニューリニューアルなどの対応なども考えていますか。
清水: ランチメニューなんかもどんどん変えていってます。セットやなくて単品でも注文できるようにするとか、味噌汁だけとか選べるようにするとか。タイ人の好きな、自分の好きな定食づくり、唐揚げとサバの塩焼きをオーダーしてご飯は別に頼むとか。今、3店舗でやってるけどこれで客単価が80B上がったんです。

アソーク本店も大幅リニューアル



―今考えてる今後の出店計画はありますか。
清水: もうオープンしちゃったけど、FCでラマ9世通りのラマNINEに4ヶ月前にビビりながらオープンした店があるんだけど、むちゃくちゃ調子いいです。その後はラチャダのストリートの「豚骨火山」跡地にオープンする予定。ここは24時間営業だから、ニュートンロー店ほどじゃないけど、夜遊びのあとで飲もうって客層を狙えるかもしれんって思ってます。オフィス街の近くだからランチも行けるんじゃないか。あと、立ち退きになるニュートンロー店の移転先を考えなきゃいかんから。場所としては、アリーかラプラオを狙ってます。でもやっぱトンローやな。売上げが全然違うんです。
FCもどんどん行きます。ただ、ここ、ギリギリの攻防なんだけど、新店出したら今のメンバーじゃ足らんですよ。でも、店出しとかんと、タイに入ってこれなくなってるミャンマー人150人が帰ってきたときに働く場所がないじゃないですか。だから、自社で新店開発せにゃならんし、うちもそんな資金がないからFCも含めて今後を考えないとです。


―今後の経営方針についてお聞かせください。
清水: 居酒屋の安売り合戦には行きたくないですわ。中間よりちょっとアップの位置取り。ただ、いまの「しゃかりき」とは違う安い業態も考えとる。客単価を安くすりゃ、ポンポンポンとどこでも出店できるやんか。名前も変えて「安しゃか」とか。こっちの方が簡単やと思う。メニューを小ポーションにして。これはこれで客層考えるだけで楽しいやんか。客層も若くなるやろうし。だってな、日本人経営の居抜きの物件はあんまり出ぇへんかったけど、タイ人経営の物件はむちゃくちゃ出てんです。そういう郊外に安いメニューの「しゃかりき」出すのもおもろいやんかと思ってます。初期投資もかからんし。家賃も安いですから。スタッフの人数も少なくて済むから人件費かかんないですから。
あと、中華や。「町中華」です。コロナでなくなったけど、にんにくラーメンやろうとしたんです。けど、らーめん一本やとしんどいから、サイドもちゃんとした「町中華」を考えてます。うちは日本人シェフがちゃんとしとるからそういうの何でもできるんです。


―コロナを振り返ってなにか感じたことはありますか。
清水: 人件費、フードコストをギリギリのとこまで落とすようになったってことです。人件費については、オペレーションを今までこんな少ない人数じゃ無理って言ってたのを、少ないスタッフで営業してればそれに慣れるんです。シフトの時間も変えたし。今まで全員16時入りって決めてたのを18時に何人、19時に何人って決めてOTがつかないようにしたとか。時間分析をしたんです。
食材で言えば、棚卸しも徹底した。傷んだりして捨ててた食材、無駄に買ってた食材をやめたことやな。各店舗で違うメニュー構成にして、その店で人気じゃないメニューは外したり。例えば、タイ人が多いエリアじゃ納豆なんか出ないし。だから売り切れも出るようになりました。


―本日はありがとうございました。

(取材=まえだ ひろゆき)

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