日韓対立の影響による韓国市場の大幅縮小で、8月の訪日外客数は2.2%のマイナスとなったが、韓国を除いた外客数はアジア各国を中心に依然として高い伸びを見せている。ちなみにタイからの外客数は中国、台湾、韓国、香港、アメリカに次ぐ規模がある。
このインバウンド需要を掘り起こそうと日本全国の自治体が積極的な活動を展開しているが、とりわけ効果を上げている県が鳥取県だ。楽天トラベルが発表している人気上昇都道府県ランキングで2018年、前年比189.6%でトップに輝いている。とは言っても国別の内訳を見れば、韓国が4割以上を占めているため今後の予断を許さないが、逆に考えれば韓国以外の需要を喚起する機会と考えることもできる。
今回のインタビューは、2012年から鳥取和牛を中心に鳥取県の産物をタイへ紹介してきたエムケイ開発株式会社の代表取締役河上貴一さん。MK開発株式会社は鳥取県内で桝水スキー場などの観光施設の運営を手がける一方、鳥取和牛を日本全国、さらには海外へに紹介する活動を展開してきた。2016年には、タイに現地法人を設立、鳥取和牛を取り扱う和食レストラン「ゆう奈」を立ち上げた。
ータイで事業を始められる前は、日本で鳥取和牛の販売をしていたということですか。
河上貴一(以下、河上):もともとは鳥取で建設屋をやっていたのですが、小泉総理大臣の時代に全国の建設業者に対して今後需要が減ってくるので、異業種参入しなさいという指導があったんです。それで、行政の指定管理者として全くの異業種だった観光施設の運営に乗り出しました。具体的には2008年にスキー場、2年後の2010年には地元産品の直売所、道の駅のようなものですが、それを県から委託されて運営するようになったんです。
ーどのようなキッカケでタイに来るようになったのですか。
河上:鳥取和牛を販売する直売所の指定業者だった関係で鳥取県の委託を受け、鳥取和牛を海外に紹介してまして、香港やマカオにも行ってました。タイに来たキッカケは2012年にバンコクのデュシタニホテルで行われたJETRO主催の商談会でした。そこで鳥取和牛を売り込みに来たんですが、それが最初です。
ータイでの和牛販売はいかがでしたか。
河上: JETROの商談会のあと、日系の精肉サプライヤーに売り込もうとしたわけですが、実際には販売できませんでした。理由は鳥取の施設が和牛を輸出できる施設として登録してなかったからです。その後、2016年に東京食肉市場に上場を果たして販売できるようになりました。しかし、補助金等の問題も絡み、販売価格が他のブランド和牛に比べ高くなってしまいなかなか売れなかったんです。それ以前に香港で価格競争に巻き込まれて販売を止めたという経緯もありましたし。価格競争になると結局は農家さんにしわ寄せが行くことになりますからね。
ーそれでも、現在鳥取和牛の販売は続けていますよね。
河上: タイでの鳥取和牛の販売も止めようかと一時期考えていたんですが、ちょうどその頃、「ゆう奈」という居酒屋を売りたいという話が出てきたんです。せっかくなので、お店を買っちゃって鳥取和牛を含めた県産品の発信基地にしようと思ったわけです。地元の鳥取県内では野菜やお酒なども含めた県産品の直売所もやってるわけですから。
実際、お店の方では、和牛以外にも、鳥取県産の日本酒もタイで売ってるものは全部入れてます。境港のカニももちろん使ってます。
ータイの食材を日本へ輸出するという事業もやっているそうですが。
河上: マンゴーですね。去年からタイのマンゴーを日本に輸出するビジネスをはじめました。なんでマンゴの輸出を始めたかといいますと、タイ人スタッフを年に一回東京と鳥取に来てもらうんですが、そのときに僕がやってる鳥取のレストランでタイフェアをやろうということになって、一週間だけやってみたんですよ。そこでタイ人がマンゴーライス(カオニャオマムアン)を出したいと言うので、青果市場からタイ産のマンゴーを持ってきてもらったんですよ。そしたらそれがものすごくまずいマンゴーで、タイ人から鳥取にはこんなまずいマンゴーしかないのかって言われちゃいまして。それなら自分で日本へマンゴーを持っていこうということで、ちょっと仕掛けてみて、山陰の米子青果市場で売ることにしました。
ー今後の展開としてはどのようなことを考えていらっしゃいますか。
河上: お店に食べに来ていただいてるタイ人の方に鳥取の食材を認知してもらう。そのつぎに鳥取をタイの人に知ってもらう。そして観光に来てもらう。そこまで考えてます。その先のことを言うと、いまチャーター便の話しをしてますが、鳥取からタイへ観光に来てもらうことも考えてます。
鳥取県でスキー場や県産品の販売所の運営管理もしているので、食に結びつけたインバウンド観光の誘致に結び付けられたらと思ってます。
ー具体的にはどのような内容がありますでしょうか。
河上: 食と観光は僕の中でくっついてるんです。観光に行けばそこで地のものを食べたりするわけですから。現状すでに「JAPAN EXPO」に観光プローション活動として参加してます。さらに10月にはサノヒロさんがやっている「SUGOI JAPAN」のイベントとのコラボも考えてます。こういうことは日本全国どの地方でもやってることですけど、食材などのモノを日本から輸出する業者とタイで販売する業者が一緒って事例は他にないと思います。
実際、いま鳥取県にインバウンドの観光客はかなり増えてるんですよ。なんで増えてるかって言うと、「名探偵コナン」。原作者の青山剛昌さんが鳥取県の北栄町出身なんですよ。そこで、来年の2月には鳥取の食材を使った料理を提供するイベントををやりますが、これに県知事をはじめコナンのパパ(?)も来る予定です。そのときにはコナングッズも日本から持って来る予定です。現在、BTSの乗車券にキャラクターとして採用されるなどコナン人気はタイでも盛り上がってますからね。
ーありがとうございました。
(取材=まえだ ひろゆき)
店舗データ
店名 | ゆう奈 |
---|---|
住所 | 155/18-19 ground floor , Sukhumvit road soi 11/1 , Klongtoey Nua , Wattana 10110 Thailand |
電話 | 02 254 9185 |
営業時間 | 8:00〜1:00 |
運営会社 | エムケイ開発株式会社 |
関連リンク | Facebookページ |
関連リンク | エムケイ開発株式会社 |