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インタビュー

【タイ発】日本生まれのタイレストランがアメリカでファストフードチェーンを目指す 株式会社スースーチャイヨー 川口 洋

日本からタイへ進出してくる飲食企業の思惑は様々。しかし、ほとんどの企業がタイをアジアの中でも有望な消費市場として位置づけている。そのために、6000万人以上の人口を抱えるタイ人マーケットを狙って多店舗展開を目指しているケースが多い。そのためのメニュー開発、店舗開発、価格戦略が重要になってくる。いわゆるローカライズ戦略だ。

一方で、日本から進出してくる飲食企業の中には、タイという国を消費市場ではない位置づけに考えている企業もある。その一つが「スースーチャイヨー社(以下、SSC)」。SSCは、日本で「クルン・サイアム」、「タイ料理研究所」などのタイ料理レストランを中心に日本国内で15店舗展開している。2017年に初めてタイへの出店を果たしたが、これは日本発のタイ料理店、タイ料理の逆輸出として話題になった。

しかし、SSCにとってタイは、多店舗展開を目指すようなマーケットではない。現在は、日本向けのタイの人材の採用拠点あるいは、食材の供給拠点として活用している。さらに今後はアメリカ市場で展開を予定している"タイ料理のファストフードチェーン"を予定しており、その時にはあらたな役割が期待される。SSCの経営理念には「我々は、タイ料理とタイ文化の普及に命をかけます。社会に貢献します。」とタイ語と日本語で掲げているが、近い将来これが3ヶ国語になる日も遠くないはず。

今回インタビューに協力いただいたのは、SSCの代表取締役の川口 洋さん。川口さんは、1992年に大学卒業後外務省に入省。11年間、外務省職員として勤務するなかで、シリアに3年、オマーンに4年と中東を中心に外交官として活躍。その後、2003年に退職しタイ料理店「ティーヌン・新橋店」 に就職。2004年より独立してタイ料理店「クルン・サイアム」を立ち上げた。飲食店経営者としては異色の経歴を持つ。


川口 洋 さん



ー現在、タイも含め、何店舗出店してますか。
川口 洋さん(以下、川口): 日本国内で15店舗、タイの1店舗も含めて16店舗になります。毎年3店舗ずつ出そうと考えていて、去年は出店できましたが、なかなかそこまで行きませんね。去年は東京ドームで2店舗出店しました。そこは注文時にお金をもらってテイクアウトするという形式ですが、そこ以外はテーブルサービスメインのレストランとしてやっています。

ータイではお店を多店舗で展開するつもりがないのですか。
川口: タイに関しては最初から多店舗展開は難しいなと思っていました。そもそも、どこの国に出店するということはこだわっておらず、タイ料理を普及させる、じわりじわりとお店が増える、既存のお客さんが増えていく、となったらいいなと思ってます。

「クルン・サイアム」バンコク店



ーでは、タイのお店の位置づけとは何でしょうか。
川口: 現在は採用拠点という位置づけが大きいですね。タイにお店を出して以来3年間で日本に5店舗出店したんですが、日本にタイのお店から送り出した人は11~12人はいます。そのうち3~4人はタイのお店でガッツリ働いたあとに日本へ行くことになりました。採用面接もタイのお店でやっていますが、かなりの人数をやってますね。タイのお店で働いてる人は、日本のお店で働くことを前提といている人がほとんどです。

ー日本でタイ料理の調理人としてのビザ取得は難しいですか。
川口: タイで料理人として5年以上働いた経験が必要です。入管の方にタイでの職務経歴書を提出して審査されます。今まで働いたタイレストランの退職証明も必要です。経歴のつながりが悪かったりすると厳しくチェックされます。追加で質問が来たりすることもあります。2019年の4月から特定技能として飲食店のフロアスタッフもビザが出るようになりましたが、逆にいままで取得できていた調理人のビザが難しくなった印象があります。落とされるケースが目立ってきています。

「クルンサイアム」バンコク店3周年イベント



ー採用関係以外で食材などにタイのお店を活用しようとしてますか。
川口: パッタイなどのソースのレシピを5種類くらいこちらで作って、タイの工場に委託するというのを何度もチャレンジしてもらってますけど、結局うまく行かなくて、まだ完成はしてません。うまく行けば、日本へ冷凍して送り出したいと思っています。あと、「スースー・ライス」という自社ブランドのタイ米を日本で販売して2年になるんですが、これはタイでお米を選んで、日本でお世話になってる卸さんに輸入してもらっています。目標は23トン/月ですが、自分たちのお店と他のタイ料理屋さん、あと通販で販売しています。

「クルンサイアム」バンコク店のスタッフと川口洋さん



ー離職率の高さなどタイ人と仕事をして困ったことはありますか。
川口: 体を壊したなど、特別な理由以外でタイ人が辞めることはほとんどないです。逆に日本人のほうが定着しないという問題はあります。なので、今後は、やり方、考え方を変えて、日本人スタッフを含めたトータルでの人の教育に力を入れていこうと思っています。その際にタイ人の考え方を取り入れています。タイ人は今がよければいい、今を楽しむ、みたいな考えがありますよね。あと、自己卑下しないとか。自己評価制度なんかもアプリを使ってやっていますが、日本人は自己評価を自分が思ってる以下の点数つけるんです。でもタイ人はそうじゃない。だから、日本人に対して、自分をそんなに低く見ていたら誰も評価してくれないよ、とかアドバイスすることもあります。

ー今後の計画はどのように考えていますか。
川口: 来年にはアメリカに進出するつもりです。事務所を借りる場所も決めています。アメリカではタイ料理をチェーン展開したいなあと思っています。言葉の問題もありテーブルサービスは難しいと思うので、ファストフード業態にしようと考えてます。特にフライドヌードルメニューをメインに。場所はロサンジェルスです。ロサンジェルスはタイ料理のレベルも高いし、安いし、ガパオ、ホーラッパなどの食材も手に入りやすいので。調味料系はちょっと高いですけどね。その時になったらアメリカに移住してやろうと考えてます。

ーアメリカでの展開はどのようなモデルを考えてますか。
川口: まず、丸亀製麺が出資してるアジアン・フライドヌードルの「WOK TO WALK」ですね。中東とかヨーロッパに展開していて、バルセロナに本社がありオランダ人が経営してます。メニューの中から麺やトッピング、ソースを選んでその場で調理してくれるんです。アメリカ発祥のチャイニーズチェーンの「PANDA EXPRESS」なんかは作り置きなんですけど、「WOK TO WALK」はその場で調理するのでライブ感もあります。アメリカではニューヨークにあって丸亀製麺がオペレーションをやっていますね。
あと、アメリカでメキシカンのファストフードチェーン「CHIPOTLE」が運営していた「SHOP HOUSE」というタイ料理のファストフードがあるんですが、ここは全部店内調理で冷凍食材は使わないんです。サンドイッチチェーンの「SUBWAY」のように最初に麺の種類やご飯を選んで、肉とレッドカレーかグリーンカレーかを選ぶ形式で、店内と持ち帰り両方に対応しているという、やはりファストフード系ですが、それが美味しかったので。そこらへんのイメージで考えてます。


ーアメリカでの展開も楽しみにしております。
本日はどうもありがとうございました。

(取材=まえだ ひろゆき)

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