
そんな経済成長一直線に向かうベトナム。なかでも商業の中心、ホーチミンはいままさに沸騰の最中にある。とにかく20代の若年層が人口の中心。彼らが所得を増やし、消費をリードするようになっている。役人たちも表面上の給与は安いが、裏経済(アンダーテーブル)の発達したこの国では、富裕層並みの可処分所得があるらしい。国民一人あたりのGDPは1,370ドルといわれているが、ホーチミンに限っていえば、6,000ドルとも7,000ドルともいわれ、途上国ではバンコクに継ぐ購買層を抱える都市に成長しているのである。一般のOLの給与は500~1,000ドルだが、ホワイトカラーの給与は5,000ドル、初任給は300ドルぐらい。ベトナム人の消費性向は「悩まないハングリー」といわれ、給料もらったらすぐモノを買ったり、高いレストランで食事したりと、貯金には回さない気質とか。だから、飲食店はどこも賑わっているのである。とくにクラブやビアレストランなどが好調。市内最大規模のビアレストラン「Vuvuzela(ブブゼラ)」を覗いたが、300席以上はあろうかという空間はテラスまで満席。「HOOTERS」に似たコスチュームの女性ホールスタッフが華やかな雰囲気を演出していた。


秀島さんは言う。「『TOKYO TOWN』は完全にローカルターゲットです。ですから、立地もレタントン通りではなく、あえてローカルの人たちがよく利用する幹線道路沿いの物件を選びました」。派手なネオンとインパクトある空間、屋台をうまく配置した空間づくりなど、エンターテインメントを求めている現地若者の集まるコミュニティーを作り上げたいという狙いもある。私が訪ねた時間、ちょうどベトナムのトップ俳優がガールフレンド連れで来店。まさにローカルの人たちにとって、「ホーチミンのデートスポットとしていまいちばんオシャレでカッコいい店」になっているのだ。客単価1,000円。ローカルにとって安い店ではないが、日本人相手の店よりは使いやすい値段。料理はすべての店からオーダーできる。このメニュー数の多さが、ローカライズの一つのポイントである。”オシャレさ”でいえば、レタントン通りの路地裏に並ぶイタリアンの「Pizza 4P’s」、ラーメンの「RAMEN BAR SUZUKI」、居酒屋の「レタントン酒場」。同じデザイナーによるオシャレ系の店だ。いずれも日本人経営者の店。レタントン通りにタクシーで乗り付け、これらの店に行くのが、ファッションに敏感な女性たちのトレンドのようだ。これから、エンタメとファッション性がホーチミンの飲食店には求められているのかもしれない。デザイナーたちの出番といえよう。ホーチミンにはレタントン通り中心に日系飲食店は150店舗ほど出店しているとされるが、純粋に日本人経営の店は70~80店舗らしい。街場への出店に関しては、レタントン通りのエリアはすでにレッドオーシャン。これからは、「TOKYO TOWN」のように、ローカルターゲット狙いで、競争のまだないエリアに出ていくことが必要だろう。
一方、商業施設への出店状況はどうか。目抜き通りのドンコイ通りやハイバーチュン通りにあるショッピングセンターには、「ペッパーランチ」ぐらいしか日系企業は出ていない。ホーチミンにはまだ市内交通がなく、駅直結の商業施設がない。これが致命的で、シンガポールやバンコクのような賑わいがないのである。政府が新都心として開発している「7区」エリアにも最近、商業施設が立ち始めているが、ファッションもローカルブランドばかりだし、レストラン街やフードコートは悲惨な状況だった。私のリサーチした限り、ホーチミンでの商業施設出店は時期尚早だし、よほど物件を厳選する必要があると感じた。とはいえ、膨張するアジアの都市でも成長余力が大きいホーチミン。中心街には「高島屋S.C」(2015年初旬開業予定)が、郊外には「イオン」(2014年上期開業予定)がやってくる。これらの日系巨大商業施設にどんな飲食テナントが入るか。「イオンには『浦江亭』が入るらしい」といった噂がすでに飛んでいる。商業施設を狙うならば、「高島屋か、イオンか」の選択がある。シンガポールで成功しているエー・ピーカンパニーの「塚田農場」あたりが出てくると、ホーチミンもより面白くなるだろう。