空港から10ドルを払ってタクシーに乗り街へ。ドライバーがすぐに英語で話しかけてきた。「お客さん、明日このタクシーまた呼んでください。電話番号教えておきます」。その意味がわかったのはホテルに着いてから。待ち合わせの「浦江亭」(ホーチミンで2店舗経営。プノンペンに支店を出して大当たり)へ行こうと、ベルボーイにメータータクシーを呼んでもらおうとしたら、「メータータクシーはありません。ウチの契約タクシーは7ドルです」と。四ツ星ホテルでこれ。賢いタクシー利用法は、直接ドライバーに電話して呼ぶのが割安らしい。親しいドライバーなら、20ドルも払えば半日乗り回せるという。街中で流しのタクシーは拾えない。トゥクトゥクが便利。1ドル払えばどこへでも行ける。プノンペンは小さな街だ。南北に5キロ、東西に5キロの中に、ほとんどのオフィス、ホテル、飲食街が収まっており、歩いても一日あればたいていのところは用足りる。一泊しかしなかった私は、かなりタクシードライバーの餌食になったようだ。でも、シンガポール並みに英語を話せるドライバーがいるのはプノンペンぐらい。ちょっと感動した。
待ち合わせの焼肉店「浦江亭」は、日本人経営の飲食店が集まる「ボンケンコンエリア」の南側にあった。2階建て一軒家スタイルで140席の大箱。後で気づいたのだが、このあたりの飲食店舗物件はほとんどこのスタイル。民家を改造した40~60坪の一軒家物件が月家賃20~40万円で借りられる。保証金は6ヶ月、仲介手数料や礼金はない。オーナーの息子さんの福田英司さんが仕切る「浦江亭」は昨年7月オープン、500~600万円ぐらいで開業できたのではと地元ではいわれている。焼肉やホルモンの盛り合わせはだいたい10ドル平均。和牛は30ドル以上の値段。ランチは5ドル程度。あまり日本と変わらない値段だが、予約を取るのが困難なほどの繁盛ぶりだった。二軒目もホーチミンから進出した「SUSHI BAR」。昨年10月にオープンするや大きな話題となり、こちらも大繁盛。刺身盛り合わせ20ドル、寿司盛り合わせ18ドル(16個)で、やはり日本のカジュアルな寿司店並みの価格。ビールは地元のアンカー生が1.7ドル、ハイネケンボトルが2ドル、サッポロの缶(ベトナムで生産、650ml)が5.9ドル。日本酒もあり久保田千寿が120ドル(1合)、八海山四合瓶は58ドル。焼酎は720mlボトル400~500ドルだった。

山崎さん、倉田さんによると、欧米系の駐在員は日本人の10倍の15,000人、うちフランス人が5,000~6,000人と多い。プノンペンの街はかつてフランス人が開いた。「東洋のパリ」とも称されるのだ。中国・台湾系が9,000人、韓国系が3,000人。トレンサップ川沿いには、欧米人が毎夜通うバーやレストランが並ぶリバーサイドエリアがある。その北側には駐在員相手のカラオケ店が密集するパブエリアがある。日本の飲食店経営者が狙うべき出店エリアは、やはり街を東西に貫くシアヌーク通りの南側に位置するバンケンコンエリアが無難だろう。日本人経営の飲食店やカフェが多く、政府関係者などの富裕層が多く住んでいるエリアだからだ。ただ、物件は逼迫しており、現地不動産情報に精通したパートナーやコンサルタントに頼ることをおススメする。前述した黒川さんは、ベンチャーリンク出身で、飲食店サポートを手がけている。農業(芋)や畜産(豚)も手がけており、若手の起業家の一人だ。彼は、「バンケンコンエリアの南側で飲食店や物販店を集めた“日本ストリートをつくりたい」と夢を語る。彼がプロデュースする焼鳥店「時代屋」もその通りのど真ん中に物件を取得した。

太田さんによると、「キリヤカフェ」の顧客は90パーセントローカル。「日本色を出すことで、安心感、信頼感が得られ、常連さんが増えます」。高級住宅街にある1号店は、ミドルからミドルアッパー狙い。欧米人が多く住む2号店は、欧米人が半分、カンボジア人が半分。太田さんは、横井社長から今後の飲食ビジネスの展開を一任されている。7月15日にはラーメン「麺屋ガチ」をオープン、8月にはファミリー向けの大箱のハンバーグレストラン「ゴリランバーグ」をオープンする予定。すでに9業態の開発を終え、マーケティングと物件開発を行なっているという。同社の飲食事業のスキームは、投資家を探し、業態開発から設計施工、人材採用、教育、オペレーションまですべて一括受託するスタイル。「プノンペンで飲食店を出したい」という投資家には面白いモデルだ。また、今後商業施設の開発が増えてくるが、商業施設に出店したい日本やアジア各国のブランド企業とアライアンスを組み、運営受託を狙いたいとも考えている。「ライバルは日系飲食企業ではなく、地元最強1番手の外食グループ、EFG(エクスプレスフードグループ)です」と胸を張る。ちなみに、現地で人材を採用する場合、同社の待遇は、アルバイトなら時給50セント、月給100ドル、店長で550ドル。プノンペンでの平均月収はワーカーで月100ドル、外資系企業や大手企業勤務の場合は400~500ドルが相場。英語ができる人材は優遇される。
