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編集長コラム

【海外外食レポート】デジタルと「日式」が交差する台湾。2024年の記憶と2026年の展望から学ぶ、飲食経営のヒント

PROFILE

菅野 壮紀

菅野 壮紀(かんの たけのり)
APPLILAB SINGAPORE CEO 飲食業界向けITソリューションを提供するAPPLILAB SINGAPOREのCEO。 シンガポールを拠点に、東南アジアを中心とした世界の飲食トレンド、Food Tech、店舗経営の最前線を定点観測している。 現地のリアルな事情に精通し、日本の飲食企業が海外の知見を取り入れるための架け橋として活動中。 https://applilab.sg/


「日本から最も近い国」という言葉が、物理的な距離だけでなく、心理的な安心感も含めて語られる場所、台湾。
私たち飲食に携わる人間にとって、台湾は常に刺激的なインスピレーションを与えてくれるマーケットです。

筆者が最後に台北の地を踏んだのは、2024年のことでした。
そこで目にした光景、そして2026年現在の国際情勢を鑑みた「今、私たちが台湾から学ぶべきこと」を、飲食ライターの視点で紐解いていきたいと思います。



### 「治安の良さ」が支える、攻めの店舗運営

台湾を語る上で欠かせないのが、その圧倒的な治安の良さです。
筆者は2024年の渡航時、運悪く飛行機でロストバゲージを経験しました。
しかし、荷物は翌日には滞在先まで何一つ欠けることなく届けられました。
この「当たり前の安心感」は、実は飲食店の運営形態にも色濃く反映されています。

例えば、夜市や路地裏の小さなお店でも、什器が屋外に出しっぱなしであったり、オープンな空間で営業を続けていたりします。
この「心理的な壁の低さ」が、客数の回転率や、街全体をダイニングに変えてしまう活気へと繋がっているのです。
日本でもテラス席やオープンエアの需要が高まっていますが、台湾の「街と店がシームレスに繋がる感覚」は、店舗設計において大いに参考になるはずです。

### SNSトレンドの変遷と、2026年の「断絶」

飲食マーケティングにおいて、台湾は常に最先端を走っていました。
2024年当時、凄まじい勢いを見せていたのが中国発のSNSアプリ「RED(小紅書)」です。


(RED(小紅書)アイコン)

 

Instagram以上に「映え」と「実利的な口コミ」が融合したこのプラットフォームは、台北のカフェやレストランの集客を支配していました。
しかし、2026年現在、国際的なセキュリティ問題や政治的背景から、REDの使用は事実上の停止状態に追い込まれています。

ここで学ぶべきは、「特定のプラットフォームに依存する危うさ」です。
流行のアプリに乗る瞬発力は必要ですが、それが使えなくなった瞬間に客足が途絶えるようでは持続可能な経営とは言えません。
台湾の飲食店は今、自社サイトへの回帰や、より地域に根ざした独自のデジタルマーケティングを再構築せざるを得ない状況にあります。
これは、特定のポータルサイトに頼り切っている日本の飲食店にとっても、決して他人事ではない教訓と言えるでしょう。

### 「日系」ではなく「日式」が席巻する、台北のラーメン事情

台北の街を歩いていて意外に感じたのは、純粋な「日系資本のレストラン」が想像以上に目立たないことでした。
もちろん、大手のチェーン店は存在しますが、街の風景に溶け込んでいるのは、現地資本が運営する「日式(日本スタイル)」の店舗です。

特に顕著なのが「日式ラーメン」の爆発的な普及です。
日本の有名店がそのまま進出するケースよりも、現地のオーナーが日本のエッセンスを取り入れ、台湾人の味覚に合わせて巧みにローカライズした店舗が、若者たちの心を掴んでいます。

* 徹底したビジュアルの作り込み(日本以上に「日本らしい」内装)
* SNSを意識した盛り付け
* 現地の嗜好(塩分濃度や油分の調整)へのアジャスト

彼らは「日本を売る」のではなく、「日本というブランドを再解釈して、台湾のマーケットに最適化して売る」という手法に長けています。
海外進出を考える日本のオーナーにとって、この「ローカライズの深度」は非常に重要な検討事項になるはずです。

### 屋台すらキャッシュレス。WEB決済が当たり前の世界

台湾の飲食シーンで最も驚かされるのが、デジタル決済の浸透度です。
2024年の時点ですでに、夜市の小さな屋台でさえQRコード決済やWEB上でのクレジットカード決済が一般的になっていました。

特筆すべきは、専用の決済端末を導入するのではなく、「WEBを介した決済スキーム」の活用です。
注文から支払いまでを客のスマホで完結させることで、店側は高価なレジシステムを導入することなく、オペレーションの効率化とキャッシュレス化を実現しています。

人手不足が深刻化する2026年の日本において、この「簡便なデジタル化」は即座に取り入れるべき武器です。
接客の質を落とさずに、会計という「作業」をいかにスマートに排除するか。台湾の屋台にある「仕組み」の中に、その答えが隠されています。


※このようなローカル店舗でもモバイル決済しか対応していない(筆者撮影)



### おわりに:再訪を願う、その日まで

現在、台湾を取り巻く国際情勢は決して穏やかではありません。
安全に、そして心から食を楽しめる環境が整うまで、筆者もしばらく再訪は控えるつもりです。
しかし、あの活気あふれる街、デジタルを使いこなしながらも人情味あふれる接客、そして常に進化を続ける食文化には、私たちが学ぶべきエッセンスが凝縮されています。

情勢が落ち着き次第、真っ先に台北へ飛び、現地の「今」を肌で感じたい。
その時にはまた、新しい食のトレンドと、私たちのビジネスを加速させるヒントを、皆さんにレポートできればと思います。

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